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 ◆ JASPIC メルマガ 2017年10月号 ◆
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本メルマガでは、定期的に日本SPIコンソーシアム(JASPIC)主催のイ
ベント情報やJASPIC関係者によるコラム等をまとめてお伝えします。

* SPI(Software Process Improvement):ソフトウェアプロセス改善

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 ◆目次
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 1. これから開催するイベント
 2. イベント実施報告:SPIトワイライトフォーラム  2017年8-9月
 3. コラム:森田 祥男(ゴールドラットコンサルティング)
           「(TOC特集4/5)TOC流 要件定義」
 4. SPI Japan 2017 実施報告
 5. 会員募集

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 ◆1. これから開催するイベント
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●SPIトワイライトフォーラム
  「IoT時代のCMMI再考
    ~CMMIのシステムエンジニアリング視点を見直す~」
  http://www.jaspic.org/events/twilight/2017-11/

  発表者:端山 毅(株式会社NTTデータ)
  主  催:日本SPIコンソーシアム(JASPIC)
  日  時:2017年11月13日(月) 18:30-20:30
  場  所:港勤労福祉会館(田町) 第一洋室
  http://www.city.minato.tokyo.jp/shisetsu/shokokaikan/kinrofukushi/01.html

●JASPIC例会(JASPIC会員限定です)
  日 時:2017年11月7日(火)
  内 容:1.SPI Japan 2017報告
         2.カンファレンス報告
            ・Euro SPI
            ・SQiP
         3.ミニネタ
             丹羽 愛一郎(個人会員)
         4.事例紹介1  矢崎総業株式会社
             (タイトル未定)
         5.事例紹介2  株式会社 日立製作所
             「効率的なテスト実施への取組み」
         6.事例紹介3  株式会社シーエーシー
             「プロセス改善  その後」
         7.事例紹介を元にしたグループ議論

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 ◆2. イベント実施報告:SPIトワイライトフォーラム  2017年8-9月
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8月は「エンジニアのトリセツ ~やりがいのある職場と育成~」とい
うテーマでデバック工学研究所の松尾谷徹さんに、9月は「プロマネ
役割の変化 ~私たちはどこに向かうのか~」というテーマで、
PMI Region 9 Mentor、神庭PM研究所・所長の神庭弘年さんに講演を
していただきました。

8月の講演では、多くの職場や教育の現場において、膨大な手続き的
な作業にクリエイティブ人材が投入されていて、付加価値が生まれな
いばかりか、人材を疲弊させ組織自身をも衰退しているという問題提
起がありました。この流れを断ち切るために、「エンジニアのトリセ
ツ」が提案され、その内容について議論を深めました。このトリセツ
を明文化して、広げることに対する期待の高さを感じました。

9月の講演では、社会や経済の質的・構造的変化が大きく、技術的イ
ノベーションが既存の市場を一変させるような激しい動きがある中で
実施されるプロジェクトやプログラムには、従来より更に広がりを
もった視野が必要となってきていることをいくつかの実例をもとに紹
介され、新しいロールモデルの説明がありました。講演後の議論の時
間では、この新しいロールモデルの内容や育成方法について、活発な
やり取りがありました。

当日の発表スライドは、次のURLから参照できます。わかりやすい内
容ですので、ぜひ参考にしてください。
http://www.jaspic.org/events/twilight/2017-8/
http://www.jaspic.org/events/twilight/2017-9/

フォーラム終了後は、恒例の懇親会で大いに楽しみました!

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 ◆3. コラム:「(TOC特集4/5)TOC流 要件定義」
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TOC特集をテーマに全5回のコラムを掲載予定で、今回はその4回目です。

こんにちは。ゴールドラットコンサルティング 森田祥男です。
1回目は、「なぜマツダは復活できたのか」
2回目は、「TOCの基本と4つの信念」
3回目は、「CCPMの正しい実践方法」
についてご紹介しました。
■1回目:
  http://www.jaspic.org/mailmagazine/201702/
■2回目:
  http://www.jaspic.org/mailmagazine/201704/
■3回目:
  http://www.jaspic.org/mailmagazine/201706/

今回は、プロジェクトに携わる皆さんが、恐らく最もお困りの要件定
義について、TOC流の考え方をご紹介します。

顧客(製品開発の場合は企画や営業)の要求をどう取りまとめて、ス
ムースに手戻り無く設計実装に入っていけるかは、ソフトウェアエン
ジニアにとって非常に大きな課題です。まだ見ても触ってもいない新
しいシステムの要件を、最初の段階で全てを正確に定義することは、
顧客にとっても難大事です。
こういった要件定義の困難が解消できて、スイスイ決まっていけば、
開発は本当に楽になります。
TOCでは、「顧客には要求を聞いてはならない。要望を一緒に考える
のだ。」という知見があります。これを実現するステップは以下の3
つで、この順番が非常に大切です。
  1)何を変えるのか?
  2)何に変えるのか?
  3)どうやって変えるのか?
顧客にヒアリングにいくと、ここはこうしてくれ、あーしてくれ、こ
れとこれはこうじゃないと困る、この仕様はこうだ、等、顧客の口か
ら発せられる要求は、大半が手段のレベルであることが多いのです。
この手段を先に聞いてから、全てを叶えようとするため、後から後か
ら手段が追加変更され、要件定義が果てしなく膨らんでいくのです。

TOCの手順では、手段、つまり、どうやって変えるのか、は一番最後
に考えます。
まず、顧客の現状、置かれた状況、これまで取り組んできた内容やそ
の結果、といった前提条件を顧客から聞き出して整理した上で、現状
のプロセスにおけるお困りごとをしっかりヒアリングします。
お困りごとは、TOCではUDE(UnDesirable Effect)と呼びます。現状
のシステムやその運用、ユーザーとの関係など、今回の開発スコープ
の周辺まで含めて、UDEをどんどん出してもらいます。このUDEのリス
トが 1)何を変えるのか?  です。

次に、それぞれのUDEに対して、望ましい状態、つまり達成したい要
望を顧客と一緒に考えます。TOCではDE(Desirable Effect)と呼び
ます。DEは、~が出来ている、~になっている、~が得られている、
といった望ましい状態で表現します。一つ注意すべき点は、手段っぽ
いのはDEではありませんので、更に考え直します。例えば、標準化が
できている、共有化ができている、コストダウンが出来ている  とい
った発言が出た時には、標準化というのは手段ですよね、標準化によ
って本当は何が実現したいのでしょうか?  と質問して本来達成した
い望ましい状態を考えてもらいます。良いDEを顧客と一緒に考えるた
めには、高いファシリテーション能力が必要となります。
UDEに対するDEが全部出たところで、顧客にイメージしてもらいます。
このDEが全部実現できた状態を頭の中で想像して下さい、と言って、
DEを順番に読み上げていきます。最後に、これらが全て実現できたら
最高ですか?  と質問して、首が縦に振れたらDEは完成です。
これが、2)何に変えるのか?  です。

最後に、3)どうやって変えるのか?  つまり手段を考えていきます。
TOCでは手段をINJ(Injection)と呼びます。2)のDEが明確であれば、
それを達成する手段は複数考えられる筈です。その中から、時期、労
力、現実性などを考慮して、取り得る最善策を顧客と検討していきま
す。その際に、DEを実現することこそが開発の目的であり、DEを顧客
としっかり握れていることで、目的を見失わず、手段レベルの議論に
陥ってしまうことを防げます。

このように、最初から顧客の要求(手段)を聞いていくと、要件定義
が膨らんで、なかなかまとまらず、また途中で変更追加が多数発生し、
プロジェクトが失敗する可能性が高くなります。しかし、顧客の要望
(DE)をお互いにしっかり握っておけば、システムの機能はそれを実
現するための一つの取り得る手段であることを、開発者が明確に理解
して進められるため、顧客の要望を外すことがありません。また顧客
自身も、途中で追加変更要求などが発生しかけても、それはDEの実現
には繋がらない、余り関係が無いと自分で判断できるようになります。
よってプロジェクトの成功の確率が格段に高まるのです。

もちろん、プロジェクトというものは本来不確実ですので、途中で変
更や追加が全く入らない訳ではありませんが、その時々にも、
UDE→DE→INJの順番で変更内容を顧客と確認することが重要です。ま
た前回ご説明したCCPMを適用していれば、バッファで変更作業を吸収
できるかどうか、即座に判断ができ、大きくリスケしたり、最後の最
後で間に合わないといった緊急事態に陥るなどの混乱を最小限で防ぐ
ことができます。
そうなると、顧客からは、柔軟で臨機応変な対応に感謝されますし、
現場からもゆとりを持って変更に対応できることで感謝され、プロジ
ェクトマネージャーはより自信が高まり成長するでしょう。

以上が、UDE→DE→INJで考えるTOC流要件定義の説明です。
これに加えて、もう一つTOCの知見をおまけします。
要件どうしの優先順位付けをどうつけるか、についての知見です。
業務システムであれば、そのシステムを導入することで、会社の売上
利益をより早く上げることに如何に直結するかが大事なのは言うまで
もありません。
2回目のコラムで、
インプット → 20 → 15 → 10 → 12 → 16 → アウトプットの図を
説明しましたが、会社がキャッシュを早く稼ぐためのスピードは10の
工程が制約(律速)となっています。つまり導入するシステムが、10
の制約工程の能力向上、スピードアップに如何に貢献するかどうかが
重要な判断基準となります。逆に非制約である20、15、12、16の能力
向上やスピードアップをいくら実現しても、会社のアウトプットは一
向に増えません。
これは実に重要なことであり、私の経験から見る限り、多くのシステ
ムが、非制約の能力向上でROIを計算し投資されています。大変なム
ダです。例えば、このシステム化によって、間接部門の工数が年間
1000時間削減できます、といったROI計算をよく見かけます。しかし
間接部門などを含めて非制約部門の効率化をいくら図っても、その部
署の業務費用の削減が投資額を上回らない限り、会社はシステム投資
の分、損をしていることになるのです。業務費用とは実際に従業員に
支払われている給与などの固定費が大半を占めますので、システム化
によって従業員数が減らない限り、会社が支払う業務費用は変わりま
せん。
もっと悪いことには、間接部門の効率化を図ったがために、本来の制
約である希少リソースに入力処理を強制し、大切な時間を逆に奪うよ
うなシステム投資は百害あって一利なしです。
この考え方は、TOCスループット会計という知識体系の中で詳しく述
べていますので、興味のある方はぜひ検索して下さい。

ここまで会社の業務システムについて話をしましたが、製品開発のプ
ロジェクトでは制約は何でしょうか。いくら自分たちが良い製品だと
思って市場に投入しても、顧客がWOWと言わなければ買ってもらえま
せん。つまり製品開発の制約は、顧客のWOWなのです。このWOWを呼び
起こす機能の要件を最優先で実現する必要があります。このWOWをど
うやって見出すかについては、次回のコラムを楽しみにして下さい。

つまり、数多くの要件から優先度をつけるとすれば、制約の能力を向
上させる要件を最優先し、非制約に関する要件は優先度を下げる、又
は今はやらないこと(Not To Do)が重要となります。要件定義に関
わる人々は、全体最適の観点から、常に制約かどうかを見極める目を
持つ必要があるのです。


今回のコラムは以上です。次回は12月となります。
「TOC for Innovation」についてご紹介する予定です。ご期待下さい。
感想など何でも結構ですので、お気軽に下記までご連絡下さい。

森田祥男(ゴールドラットコンサルティング)
yoshio.moritaアットgoldrattgroup.com
(宛先の「アット」を「@」に置き換えてご連絡下さい)

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 ◆4. SPI Japan 2017 実施報告
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2017年10月11日-13日で“「楽(かな)でる!」 ~共に楽しみ、共に
創る!”をテーマに SPI Japan 2017を開催いたしました。一般発表
37発表の中から以下の方々が受賞されました。

■最優秀賞
  CMMIを活用した社内版プロセス評価モデル構築による全社品質・生
  産性向上への貢献
        柳田 礼子(日本電気株式会社)

■実行委員長賞
  アジャイル開発におけるプロセス改善事例
    ~楽しく・早く・確実に~
        中野 安美(ニッセイ情報テクノロジー株式会社)

■プログラム委員長賞
  IoTに欠かせないBLE通信のテスト自動化によるテストプロセス改善
    ~早く、確実に、誰でもできる~
        伊藤 卓也(オムロンヘルスケア株式会社)

■特別賞
  自分事化影響要因に着目した中期経営立案・展開への共創アプロー
  チ[現状分析~計画立案編]
        安達 賢二(株式会社HBA)

なお、発表資料は11月末を目途にJASPIC Webサイトに掲載いたします。

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 ◆5. 会員募集
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JASPICは、現在、16社の法人会員および個人の会員によって構成され
ています。SPIの技術や活動の進め方を学びたい、議論したいという
法人会員、個人会員を募集しています。
詳しくは、次のサイトを参照してください。

  ■入会について
    http://www.jaspic.org/organization/join_us/
  ■会員企業と運営体制
    http://www.jaspic.org/organization/members/

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 ◆編集後記
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メルマガ編集担当のA.Kです。
SPI Japan 2017に参加していただいた皆さま、ありがとうございまし
た。今年のプログラムはいかがでしたでしょうか。来年は初めての開
催地名古屋です。皆様にご満足いただけるよう準備していきますので、
よろしくお願いします。
SPI Japan のスタッフルームには、毎年いろいろな差し入れが届けら
れます。今年の一押しは、朝ドラ「ひよっこ」の舞台である茨城県の
お土産「大みか饅頭」でした。「大みか」というのは茨城県北部の地
名で、漢字で書くと「大甕」。普通読めないですよね。白い皮と上品
な甘さの餡が絶妙な美味しさでした。ネットでお取り寄せもできるよ
うなので、興味がある方はぜひ。茨城のお饅頭を食べながらSPI Japan
運営のお手伝いをしていたら、「がんばっぺ!」と谷田部みね子の気
分になりました。(朝ドラ観ていなかった方、すみません)

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 JASPIC メルマガ 2017年10月号
 発行:日本SPIコンソーシアム http://www.jaspic.org/
 お問い合わせ先:infoAアットjaspic.org
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